
真っ白な砂、その上で水面から差し込む光がやさしげに遊ぶ。色とりどりのサンゴ礁が広がり、カラフルな魚達が乱舞する。よく見かける、南の海らしい明 るく華やかなワイド写真。
私もそんな写真が撮ってみたかった。ところが、ファインダーの向こうにそんな風景は見つからない。
ワイドカメラを片手に、あっちへふらふら、こっちへふらふら。重たいカメラはウェイトと化し、海は筋力トレーニングの場となるってわけ。
よく考えてみれば、八丈島にはサンゴ礁もなければ明るい海もない。あるのは暗色の黒い岩肌の海底と蒼い海だけ。
皆が期待しているような回遊魚や大物は、そう度々出会えるものではない。ダイナミックな地形も、ファインダーの中では、ただの黒い壁と化す。カラフル な魚が群れていたとしても、自分がイメージしているような絵にならない。
八丈島じゃあ無理なんかい!?
八丈島でワイド写真は撮れないってこと!?
でも待てよ。よくよく考えてみれば、自分がサンゴ礁の明るい海のイメージを、無理矢理八丈島の海に当てはめようとしているのがいけないんじゃないだろ うか。
素直に、真っ直ぐに、八丈島の海を表現してみたら・・・?
八丈島らしい海、八丈島らしい海・・・。
考えるまでもないか。八丈島には黒潮特有の、藍色に染まる八丈ブルーの海が広がっている。そして暗い海底にそそり立つ数々のアーチが存在する。
海とアーチ、どちらもお互いの暗さを主張し合い、お互いを際立たせている。これをワイドで表現すればいいんだ。
でも八丈島のアーチの写真ってプロからアマまでいろんな人が撮っているんだよね。
その多くのアーチの写真はどれもこれも似たり寄ったりの写真が多い。
そんな写真を撮っても何も面白くもない。て言うか撮りたくない。
こうなったら、徹底的にいろんなアーチを様々な角度から撮ってやるぅ!と息巻いて海へ。
そんなことを辛抱強くやっていたら、ファインダー越しに巨人が大きな口を開けて佇んでいた。
これだ!思わず叫んだね。